コーヒーの価値を判断する“味”の意識を変えたい
老舗喫茶店が多く存在する京都。日本の伝統や文化が鮮やかに残るこの街に、新たなコーヒー文化を作り上げようとしているのが、WEEKENDERS COFFEEの金子将浩氏だ。2016年、富小路にオープンした店は、街に残る家屋を改装し、日本古来の佇まいに意識が向くよう設計。店にあるのは、コーヒーとそれを味わうためのカウンターだけという潔さも魅力だ。
父と喫茶店を訪れることが日課だった金子氏にとって、幼い頃からコーヒーは身近な存在だった。とにかくコーヒーが好きで、学生時代はカフェで働いていたことも。そんな金子氏がコーヒーを仕事にしたいと思うきっかけとなったのは、世界バリスタチャンピオンシップで準優勝した門脇洋之氏の店、CAFÉ ROSSOで飲んだエスプレッソだった。そのエスプレッソに大きな衝撃を受け、2005年にWEEKENDERS COFFEEの前身となるカフェをオープン。当時は深煎りのエスプレッソ系ドリンクを中心に、フードメニューも提供していた。しかし、時が経つにつれて、コーヒーへの想いが募り、2011年からは自家焙煎をスタート。産地や焙煎度の異なるたくさんのコーヒーと向き合ってきたことで、WEEKENDERS COFFEEで提供している“本当に届けたいコーヒー”にたどり着いた。そんな金子氏がいま目指しているコーヒーとは。
“豊かなフレーバーがありながら、バランスよくクリーンなコーヒー”を作りたいと思っています。しかし、目指す方向はあれど、到達点がないのがコーヒー。より良くするために、昔は一人で行っていたカッピングを、今は焙煎士やバリスタと一緒に行うことで、チームとしてさらに美味しいコーヒーを作るようになりました。
本来コーヒーは産地だけでなく、地区やその中の区画によっても味が異なります。それを焙煎や抽出によってもっと表現できたら、コーヒーの多様性を今以上に伝えられるはずです。味の違いが伝われば、コーヒーの価値を判断する“味”への意識も変わると思っています。
しかし、今のところコーヒーはファッションの一部になってしまっています。テイクアウトカップなど見た目が重視されていて、コーヒーそのものや本質的なことは伝わっていません。私がWEEKENDERS COFFEEをコーヒーだけの店にしたのは「余計なものをそぎ落とさなければ、本当に伝えたいことが伝わらない」と考えたからです。コーヒーしかなければ、自然とコーヒーに意識が向くし、スタンディングの席しかなければ、隣に立った知らない人と自然に会話が生まれます。
コーヒーの多様性を伝えられるよう、私は意識と覚悟を持って、京都に新たなコーヒー文化を築いていきたいと思っています。
店舗情報
WEEKENDERS COFFEE 金子将浩のセミナーイベント
Interview & Text: Ayako Oi (CafeSnap)