誰ひとり手を抜けない、熱意のリレーでコーヒーはできている

TRUNK COFFEE  鈴木康夫

独自の喫茶店文化がある名古屋。深煎りコーヒーの文化が根強く残るこの街で、2014年にTRUNK COFFEEはオープンした。アヴァンギャルドなビジュアル、そして誰もやっていないことに挑戦し続けているのが 、ある意味“コーヒー業界の異端児”として知られている鈴木康夫氏だ。そのルーツは北欧にある。旅行会社で働いたのち、「ヨーロッパに住みたい」とマルタ共和国に移住。海を見ながらコーヒーを飲む生活の中で、自然とコーヒーに興味をもった。「やるなら最高のところで」と、世界一バリスタチャンピオンを輩出しているデンマーク・コペンハーゲンへ移住。バリスタ経験がないまま、寒空の下、働き先を探してカフェを回り続けた。「可能性は0ではない。絶対バリスタになる」という強い想いが道を開いたのは、働き先を探し始めて約3ヵ月後のこと。断られ続けても何度も店を訪れ、ついにこぎつけた5日間のトライアル採用がバリスタ人生の始まりとなった。

旅行会社時代の同僚だった田中聖仁氏とともに開いたTRUNK COFFEEには、北欧のカラフルなソファやテーブルが置かれ、他の店とは一線を画すスタイリッシュな空間が魅力だ。深煎りコーヒーが多く提供される名古屋で、TRUNKは北欧スタイルの浅煎りを中心とするコーヒーを提供。その魅力を多くの人に伝えるために、時には深夜のクラブでコーヒーサーブをすることもある。そして昨今、業界の人々を驚かせたのは、志賀高原ビールとのコラボレーションで開発したコーヒービールや、岐阜県の美濃焼きのメーカーとともに作ったコーヒードリッパーなど多数。多角的なアプローチでチャレンジを続ける鈴木氏にとってコーヒーとは。

コーヒーは農産物であり、コーヒーチェリーを栽培して、摘み取り、精選処理、輸送、焙煎、抽出してはじめて一杯のコーヒーになります。関わる全ての人の情熱を繋いで、コーヒーは作られています。だから、コーヒーチェリーが作られる農園から、カップ一杯のコーヒーになるまで、関わる人がひとりでも手を抜いたら、“本来の味”は表現できない。それぐらい大変な労力がかかっています。

それにも関わらず、情熱を持って作られる品質の高い“スペシャルティコーヒー”や、それを提供するために最後のバトンをうけとる“バリスタ”という仕事がまだ知られていない、それが現状です。だからこそ、まずはこのコーヒーを体験し「なぜ美味しいのか、なぜ他よりも高いのか」コーヒーのバックグラウンドを知ってほしいし、僕達はそれを伝えたいんです。

TRUNK COFFEE  鈴木康夫

コーヒーを作る上では“常に疑う”ようにしています。コーヒーは生き物。焙煎後、豆は日ごとに変化していくので、その変化を敏感にキャッチし、目の前にあるコーヒーを“目指す美味しさのコーヒー”にするにはどうすればいいのか、アプローチの引き出しを増やすようにしています。

熱意のリレーでできたコーヒーは、チャンスや人の繋がりを生み出します。コーヒーが作り出す可能性は無限大なんです。だから僕は、そのコーヒー自体を広げることをクリエイトしていきたい。そして“地方のヒーロー”になりたいですね。コーヒー屋から地方を活性化させていきたいです。

店舗情報
TRUNK COFFEE 鈴木康夫のセミナーイベント

Interview & Text: Ayako Oi (CafeSnap)

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